笠井の観音様

だるま市の行われる福来寺の本堂には笠井観音が祭られています。
毎年、だるま市開催日(令和7年より1月の第2日曜日)のみご開帳されます。

大同元年(806年)、6月半ば雨が降り続いていて天竜川は氾濫を繰り返していました。この辺りの支流の鹿玉川が流れていましたが、同じように大雨が降る度に辺り一帯は泥の海になり、せっかく作った農作物も大変な被害にあって、村人達は途方に暮れていました。神仏に祈っても天候が回復する兆しはありません。

そんなある夜、一人の村人が絶望に打ちひしがれながら、濁流をながめていると、川瀬に光っているものがあります。翌日さっそく、その話を村人にすると二人の相談はたちまちまとまりました。

二人は大雨の中で悪戦苦闘して昨夜見た光る物体を川の中で探しまわりました。そして、とうとう泥の中から木彫造りの聖観世音菩薩を見つけ出したのです。 
「これだ、これに違いないずら、昨日の夜、神々しい光を放っていたのは。」

二人はそれを井戸水できれいに洗い、川のそばの大樹の木陰に安置しました。そして雨に濡れないように笠をかぶせお花を供えました。

するとどうでしょう、アッという間に雨は上がり、泥水は消え、元通りの肥沃な土地が戻ってきたではありませんか。

それ以来、この村は洪水に見舞われることもなく、豊かな作物に恵まれ、村人達は幸せな日々を送るようになりました。そして誰云うことなく笠冠り観音と愛称されるようになり、近郷近在の人々からも信仰を集めてお花やお線香が絶えることはありませんでした。

笠冠り観音は年月を経て、笠井観音と呼ばれるようになり、観音様のある村は笠井村と通称されるようになりました。笠井には人が集まり、物資の集積地となり商業が栄えました。


毎年、だるま市開催日(令和7年より1月の第2日曜日)のみご開帳されます。